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金融AIの業務設計:抽出・照合・判断を分けて考える

Foundry Labs公開日: 開催日 ·
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Tokyo AI「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」のイベント告知画像。
Tokyo AI「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」、2026-06-10。 · Tokyo AI (TAI).

金融業務のAI活用は、仕事を分けると考えやすくなります。文書を読むこと、別の記録と照合すること、結果を受けて判断すること。それぞれ必要な根拠も、任せられる権限も異なります。

2026年6月10日のTokyo AIイベント「AI in Financial Services」では、Colin Rowat氏、Jeff Tsui氏、Sanjeev Sinha氏が、LLMの失敗、機関投資家のデータ、グラフを使った調査をテーマに取り上げました。共通するのは、モデルが支援する範囲を明確にする必要性です。

説明が自然でも、方法が検証されたとは限らない

Rakuten Institute of TechnologyのPrincipal Research Scientist、Colin Rowat氏は、汎用LLMへ予測を尋ねることと、専門的なモデルやAIを使って分析を支援することを区別しています。金融の仕事を売買だけに限定しない視点も示しています。

重要なのは、出力の正しさを何で確かめるかです。自然言語の説明は問題を理解する助けになりますが、データや計算、判断基準が正しいことの証明にはなりません。生成したコードは意図した計算に照らして確認し、文書に関する回答は元の記録へ戻れる必要があります。

報告日を抽出する、確認済みの保有情報から数量を計算する、将来の価格を予測する。これらは別の課題です。一つができたことを、他の課題へそのまま一般化できません。

「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」の講演風景。
2026-06-10開催、Tokyo AI「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」の会場。

抽出が終わっても、照合は終わらない

Visual AlphaのCEO兼創業者、Jeff Tsui氏の講演テーマは、形式の揃わないファンド情報を、会計、リスク、運用実績、報告の業務へつなぐことです。

数字を正確に読み取れても、対象期間、通貨、組織、計算の基準が違えば、誤った使い方になります。二つの記録が食い違う場合には、もっともらしい方を選ぶのではなく、食い違い自体を残して扱う必要があります。

そのため、抽出先の形式には業務上の意味が必要です。値だけでなく、単位、期間、出所、確認状態を区別します。次の処理へ渡してよい情報かを判断できて、初めて抽出が業務へつながります。

関係性を見つけることと、結論を出すことを分ける

SHIFTのAI Evangelist、Sanjeev Sinha氏のプログラムは、知識グラフとグラフニューラルネットワークを使った不正・異常の調査です。知識グラフは対象と関係を表し、グラフモデルは関係のパターンから確認すべき事例を探します。エージェントが問い合わせを調整し、担当者向けに証拠を整理する構成も扱います。

ただし、口座間のつながりが見つかっても、それだけで不正の証拠にはなりません。担当者には、関係の中身、日時、優先して調べる理由が必要です。説明文も、元の証拠から切り離してはいけません。

情報を集め、矛盾の可能性を見つけ、別の説明を調べ、必要に応じて上位判断へ渡す。こうした段階を持つ調査業務として設計できます。

「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」の講演風景。
2026-06-10開催、Tokyo AI「AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detection」の会場。

Foundryの視点:自動判断より先に、例外を処理できる状態を作る

複数の形式で届くファンド報告書から月次報告を作る業務を、仮の例として考えます。PoCは数字を表に並べられれば成立します。本番では、どの報告書の値か、既存の記録と一致しているかまで確認します。

最初は項目を絞り、それぞれ何を満たせば「照合済み」なのかを定義します。期間の一致や、定義した計算での合計確認は決まった処理で扱えます。一方、訂正版の報告書や未知の分類は、人の解釈を必要とする場合があります。

そのような事例は、確認可能な例外として担当者へ渡します。異なる値、出所、フラグの理由を並べ、修正後も元の証拠を残します。報告を整えるために入力を黙って書き換える設計は避けます。

初回の導入では既存業務と並行して動かし、照合結果、例外の解決時間、最終報告へ残る誤りを比較できます。自動化が仕事を減らしたのか、見えにくい確認作業へ移しただけなのかを確かめるためです。

その結果を見て、対象項目や自動処理の範囲を広げます。Foundry Labsの企業向けAIエンジニアリングにつながるのは、不揃いな入力の解釈をモデルで支援しながら、検証、責任、業務システムとの接続を一緒に作る視点です。

出典・関連情報

本記事は、AI in Financial Services - From LLM Failure Modes to Graph-Based Fraud Detectionのイベント案内と上記の講演をもとに構成しています。Tokyo AI(TAI)は研究者、エンジニア、企業をつなぐコミュニティです。Foundry Labsのコミュニティ活動もご覧ください。

Colin Rowatの登壇資料をご希望の方は、お問い合わせフォームより、イベント名と登壇者名を添えてご連絡ください。

登壇者プロフィール

Colin Rowat。Rakuten Institute of TechnologyのPrincipal Research Scientist。金融AIと形式的検証に取り組む。 LinkedIn

Jeff Tsui。Visual Alpha創業者・CEO。投資データを扱う業務に取り組む。 LinkedIn

Sanjeev Sinha。SHIFTのAI Evangelist。金融とAIの領域で経験を持つ。 LinkedIn

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